フットパスでつなぐ、地域の魅力アップ事業(2018年度「龍谷チャレンジ」採択事業)

最新情報

(1)事業の概要
昨年度から東近江市と連携し、フットパスに取り組み始め、フットパスマップを作成した。また、東近江市全体でフットパスを推進するために昨年度作成したフットパスマップ以外にも他の地域でフットパスマップを作成する必要がある。そこで、我々は、地域の方々と話し合いやまちあるきを重ねてフットパスマップの作成を行うとともに、フットパスの活動主体の設置を促すことで持続可能な活動体制の構築を目指す。

(2)事業実施に至る経緯と背景
東近江市森と水政策課がフットパスに着目し、以前から交流のあった私たちの指導教員である牛尾洋也教授と連携を図るようになった。そこで、「みらいの環境を支える龍谷プロジェクト」が東近江市でフットパス活動を開始した。一昨年は、フットパス先進地へのヒアリング調査実施や、東近江市でのヒアリング、まちあるき、仮マップ作成などを主に行った。その後、今年度から東近江市の事業としてフットパスプロジェクトが採択され、私たちがその業務を委託するという形となった。これが本事業実施に至る経緯である。

(3)事業実施項目
・八日市でのフットパスイベントの開催
6月9日に東近江市八日市地区で東近江市役所と協働し、フットパスイベントを開催した。目的は、モニターイベントとして、フットパス関係者および住民の方々を招待し、フットパスへの認知度および理解を高めることである。私たち学生がガイドを務め、参加者はてくてくまっぷ記載のコースをイベント用に改定した2つのコースに分かれ(山コース・街道コース)、計31名でイベントを楽しんだ。昼食は地域の商店街の「KOKON」というお店に協力して頂いた。終了時には参加者の方とワークショップを行い、イベントの反省や今後八日市でフットパスをどのように行うかを話し合った。地域の方からは、「八日市にこんなスポットがあったんだ」と、改めて自分が住んでいる地域の良さなどを再認識したという意見などがあった。またコースの改善点やフットパスをするにあたって店との連携が必要である等の指摘を地域の方からいただいた。このイベントの開催で、関係者や地域の方々にフットパスのイメージをある程度つかんでいただき、東近江市でのフットパスの輪を広げるきっかけとなったのではないかと考えている。しかし、地域の方々の巻き込みという点で大きく課題が残った。

・全国カレッジフットパスフォーラム2018in阿蘇への参加・発表
9月14日、15日に熊本大学と佐賀大学の共同主催で行われたフットパスカレッジフォーラムに参加した。1日目は佐賀県の小城フットパスを体験し、2日目にポスターセッション等を行った。他大学の学生によるフットパス活動について知ることができ、連携の仕方やフットパスの進め方、地域の方々からの理解についての課題について多くの情報を受信することができた。また、フットパスを進めていくことと並行し、担い手探しとガイドの育成をするべきであるとの助言も専門家の方々から頂くことができた。

・WaWくまもと国際シンポジウムの参加
2018年11月10日に美里町文化交流センターひびきにてWaWくまもと国際シンポジウムが開催された。11日には、熊本県下の3地区でインターナショナルウォークが実施された。熊本県では、歩く文化が浸透してきており、歩く人を歓迎する町作りが県全体での動きとなるように取り組まれている。今回のWaWくまもと国際シンポジウムでは、様々なフットパスに関する立場の方々が参加されており、各々のフットパス活動に関する取り組みについてお聞きし、今後フットパスを進めていく上での重要な点や地域の連携について学ぶことができた。

・奥永源寺てくてくまっぷの作成及びワークショップ
奥永源寺のマップは、4つの地域(黄和田町・杠葉尾町、政所町・蓼畑町、蛭谷町・箕川町、君ヶ畑町)に分けて作成した。八日市のマップと同様に、各地域それぞれのイメージに合ったデザインや、奥永源寺の地図や地域の概要などを記載し、マップだけで地域のイメージを掴んでもらえるようにした。奥永源寺地区は、山村地域ということもあり、人が来訪することにあまり慣れておらず、地域の中を勝手に歩かれるということに抵抗を持つ方々もいらっしゃった。そこで、八日市に比べ、非常に詳細な地図を記載するとともに、黄色い線でコースを示すなど、歩いても良い道とそうではない道の区別をはっきりとさせた。また、最後にフットパスを行う上で参加者に守ってほしいことが記載されたカントリーコードを載せることなどにより、地域の方々への配慮を意識したマップとなっている。さらに、市街地からのアクセス方法等を載せ、来訪のし易さを図った。
コースは地域の方々に考えて頂き、その後学生と地域の方々がまちあるきを行うなどしてコースの完成度を高めていった。また、地域のストーリーや見どころを地域の方にお聞きしたり、地域や市役所の方々とともにワークショップを開催し、その意見をマップに反映させるなど地域の方々を巻き込みながらフットパスマップを作成した。

・奥永源寺でのフットパスイベントの開催
 11月23日、マップを作成した東近江市奥永源寺4地区でフットパスイベントを開催した。今回のイベントは、一般公募で行ったところ、参加者計40名で男女の偏りはあまりなかった。年齢層は60代が最も多く、次いで70代となった。春のイベントの反省を踏まえ、奥永源寺では地域の方々にコースを考えて頂いたり、イベントの際には昼食の用意やガイドをしていただくなど、地域の方々を積極的に巻き込むことができた。また、マップ作成やイベントの開催などを通し、フットパスへの地域の方々の理解を深めることができたのではないかといえる。

・全国エコツーリズム学生シンポジウムの参加
今回のシンポジウムのテーマは「暮らしと観光」とされており、1日目は、研究報告やポスターセッションによる活動報告が行われた。そして、2日目は沖島でのエクスカーションが開催された。私たちは「フットパスを活用した地域活性化の課題と展望」について報告し、私たちを含めた8組の研究報告や25のポスターセッションで、聞くことのできた考え方や手法は、フットパスにも活かすことのできる部分が多くあるように感じた。今回、全国エコツーリズム学生シンポジウムに参加することで得ることのできたものを東近江市でのフットパス事業だけでなく、他の活動にも活かしていきたい。


(4)事業の成果
・春及び秋のフットパスイベントの開催により、地域の方々を始め、東近江市内外の多くの方々にフットパスを知っていただくことができた。具体的には、イベントを開催するにあたっては、市役所や地域おこし協力隊の方々と連携し、地域の方々にフットパスへの説明を行ったり、チラシの全戸配布を行ったり、市内のイベントに参加する等して、イベントの参加を促すとともにフットパスへの認知度を高めることができた。また、秋のイベント当日では、びわこ放送の方に取材して頂き、「テレビ滋賀プラスワン」というコーナーで私たちのフットパス活動を取り上げて頂いた。それにより、市内だけではなく、県内へのフットパスの認知度向上を図ることができた。
・秋のイベントの開催においては、地域おこし協力隊をはじめとする地域の方々が主体的にコース作成や、昼食の手配、ガイドなどを行い、地域の方々を積極的に巻き込むことができた。また、イベントでの外部の方々との交流やイベント後のアンケート調査によって、地域の方々自身の地域の魅力再発見や誇りの醸成にも繋がったといえる。また、参加者の方からは、「また来てみたい」「住んでみたい」「自分の地域について改めて知りたい」といった意見が寄せられ、地域の魅力を十分に発信することができた。
・奥永源寺地区黄和田町・杠葉尾町、政所町、箕川町・蛭谷町、君ヶ畑町の4つのフットパスマップを作成した。それぞれ作成するにあたり、地域の方々とのワークショップを行い、地域のいいところや面白い道など聞いて意見をマップに落とし込むことで、地域の魅力再発見や地域の方々に愛着のもってもらうことができるマップを作成することができた。ワークショップ際、イベントの反省も行ったところ、「次年度もやりたい」「マップのデータをもらい自身の地域で発注し、活用していきたい」といった前向きでかつフットパスを主体的に行っていきたいという意見を頂くことができた。地域主体で持続可能な活動体制の構築に向け大きく前進することができた。
・来年の4月に開催される「第七回山歩道」という地域のイベントではフットパスを新たに採用することにより、その地域の地域のイベントということで参加をしてこなかったその地域と対立する地域をフットパスという大きな概念でつなぐことにより、これまで未参加だった地域のイベントの参加を可能にした。

(5)課題と今後の展望
 現在、東近江市フットパスプロジェクトとして、八日市・奥永源寺地区において正式なフットパスマップを作成し、東近江市内でのフットパスの推進に取り組んでいる。しかし、上記地区だけではなく、愛東地区や五個荘地区、能登川地区などその他の地域にも取り組み、東近江フットパスプロジェクトの輪を広げていく必要がある。また、各地域において、フットパスに長期的に取り組んでいけるよう地域主体の持続可能な体制の構築を図り、地域活性化のツールとしてさらに活用していく必要がある。
そこで、次年度は、上記地区でのイベント開催等を通し、持続可能な活動体制の構築を図るとともに、上記地区以外のフットパス活動にも取り組み、フットパスマップの作成やフットパスの認知度の向上を図っていく。また、次年度は、全国のフットパスに取り組む学生が参加する「フットパスカレッジフォーラム」というイベントの主催をみらいの環境を支える龍谷プロジェクトが行うことになったため、このイベントを活用し、東近江市のフットパスの発信を行う。さらに、この際、東近江市内でのフットパスイベントの企画をし、地域の方々のフットパスへの理解や活動主体としての体制の構築を図るきっかけとする。
また、昨年末、東近江市エコツーリズム推進協議会フットパス部会において日本フットパス協会に加入することが決定した。今後は、全国のフットパスの団体の交流を図りながら、東近江市でのフットパス活動を推進していく。
 
(6)事業実施を通じて見出された特長
1. ポイント1「地域における外部のとの関わりの必要性」
2. ポイント2「フットパスによる地域活性化の可能性」
3. ポイント3「学生がすべて行うのではなく、地域主導への移行を目指す」

活動団体情報

代表者
みらいの環境を支える龍谷プロジェクト 代表 湯川希(法学部法律学科)

連絡先
REC事務部(京都)

主な連携メンバー
滋賀県東近江市

活動開始時期
2009年4月

主な活動地域
滋賀県東近江市

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