龍谷大学学生気候会議(社会連携・社会貢献活動部門)(2023年度龍谷チャレンジ採択事業)

(1)事業の概要

日本においてSDGsを実現するために、学生間でも主体的に考え、取り組みを行う場をつくりたいと考え学生気候会議を実施する。その中で、「龍谷大学カーボンニュートラル宣言」の取り組みへの提言」を、議論テーマ及びアウトプット目標として設定し、学生同士の主体的な話し合いを実施。また、事後プロジェクトを立ち上げ、気候会議で話し合った内容や学んだことをイベントの開催を行うなどして地域の脱炭素社会達成に貢献する。

(2)事業実施に至る経緯と背景

本プロジェクトは持続可能性の実現に向けた一歩であり、世界全体の急務となっている持続可能性の実現に関して有意義だと考えた。また、気候変動のような課題解決には市民一人一人が関わり取り組むことが必須となっているが、日本においてそのような傾向はあまり見られていない。そこで私たちは学生の街京都において、龍谷大学の学生を巻き込み持続可能性について知り、話し合い、考える場を提供したいという思いがあり、それに関する社会的需要は大きいと考え、実施に至った。

(3)事業実施項目

1.ファシリテーション研修の実施

会議当日のグループワークにて、円滑に議論をすすめることのできるファシリテーターを育てるために実施。

2.学生気候会議の開催

1日目

アイスブレイクを兼ねたカードゲーム「2050カーボンニュートラル」を実施。つぎにグループワークを行う前の基礎知識を提供する場として、教授や外部講師の講義を実施。講義のあとは、6人1チーム計5グループに分かれて講義に出た5つのテーマについて大学に求めたいあり方や取り組みを議論し、模造紙にまとめた。

2日目

1日目の振り返りからはじまり、前回グループで話し合い模造紙にまとめた内容を発表した。次に、伏見工業高校跡地に建設予定の住宅地について、株式会社市浦ハウジング&プランニング大阪支店の方から、外部講師の木原氏との対話、そして学生からの質問に答える形式で説明を受けた。そのあと、木原氏から現地へ調査に行ったオーストリアの環境問題に対しての取り組みの事例をいくつか紹介していただき、学生グループで提案を出し合い共有した。最後に工業高校跡地の住宅地について先に出た提案を検討し、模造紙にまとめていき全体で最終発表を行った。

3.事後プロジェクト発足のための調査実施

工業高校跡地のエコ住宅地についての議論のあとに参加者や実行委員会メンバーから、自分たちが実際にあるプロジェクトに関わることで具体的な案を考える機会があり、環境問題について身近に感じることができたため、同じようにもっと身近に環境問題について知ることができ、同時に実際に問題改善に貢献できる場が欲しいという意見が出た。その際に、自団体が創られた初期からもメンバー内で、環境問題を改善することは難しいもの、大変なものという認識を無くせるようなプロジェクトを行いたいという意見が一貫して出ていたため、ものづくりを通して環境に配慮したプロジェクトを実施することで、環境問題に関心がない学生も楽しみながら学ぶ機会が得られると考え、そのような取り組みを行っている場に委員会メンバーで研修に行き、プロジェクトを発足するにあたり参考にさせていただいた。

4.あいとうエコプラザ菜の花館

菜の花を通して地域資源循環型社会を目指す取り組みを行っている当施設にて、研修と体験、館内見学を実施。研修では、約90分間「菜の花エコプロジェクト」が発足した経緯や取り組み内容を講義していただいた。体験学習では、個人や学校などから集められた廃食油を使用したエコキャンドル作りを行った。館内見学では、研修で説明されていたエコプロジェクトにおいて使用されている施設や製造の様子や作業の様子の説明を受けながら学んだ。

5.川端商店

「人と地球に優しいモノづくり」をコンセプトに掲げている当施設にて、天然の材料を使用した草木染め体験を実施。染料に使用する材料や色の特徴、手作りでの作業の大変さ、また良さを説明していただいた。

(4)事業の成果

  • 気候会議を実施することで、環境問題に関心がある生徒のみならず、事前知識を持っていない学生に対しても講義形式で講師から情報提供を受けることができ、その情報を活用してグループワークで自分の考えを共有でき、また学部や学年を超えた周りの様々な意見を知ることができる機会を作れた。
  • 講義内容に関しては、多種多様な経歴をもった講師を招くことで、様々な視点の基礎知識から発展情報まで提供することができたため、議論に際して様々アプローチで考え意見する学生が見受けられた。
  • 今回は過去2回の気候会議の時とは異なり、実際に地域で始動しているプロジェクトである伏見工業高校跡地のライフ・デザインについて、学生の視点から事業者へ提案を出す場を設けることができた。こうした現在取り組みがなされている事業について考える機会があることで、より具体的に環境問題対策に対して、またそこで生活するうえでどのような取り組みを行う事がひと・地域・社会にとって好ましいのか考えることができた。加えて、今回の事業場が伏見区で大学から近いこと、かつ学生寮を建設予定ということもあり、参加者はより身近な取り組みとして真剣に考えることができた。
  • 事業者にとっては環境問題について敏感な学生や自分たちとは異なる視点を持つ学生の意見を参考にでき、また斬新な意見を新たな活用方法として見出すことのできる非常に貴重な機会であった。
  • 地域にとってもこれからを担う若者がまちづくりについて考えることで、事後プロジェクトのための調査を通して、両施設において環境問題について楽しく触れて考えることができ、少しでも問題改善に貢献していると感じられた。また自身で直接学び、考えることで新しいアイディアが生まれるというよい経験ができた。何よりもモノづくり体験には、気軽に環境問題について知れる機会をつくることができるのではないかということを実感でき、同時にこのような体験を他学生にも広めていきたいという想いが強まり今後のプロジェクト発足に際して勉強になった。

(5)課題と今後の展望

全学部・学生の中から無作為で気候会議への参加募集をかけたが、実際に参加した学生の所属学部が政策学部や国際学部等に偏りが出ていた。そのため多様な意見や考えを共有して議論する場として位置付けている気候会議では課題として残った。
また、会議後に事後プロジェクトを立ち上げ、会議参加者とともに活動する目標を掲げていたが、期間中には実行委員会のみでの調査段階で終わってしまった。
今後は、会議の参加者の中には事前知識がなければグループワークで議論するのは厳しいのではと考えていた学生が何名かいたため、募集をかける際に事前知識不要、多種多様なひとに参加してほしいので気候問題対策に懐疑的な意見を持っているなどしても参加してほしいなどと、参加へのハードルを下げる告知を積極的に行う。
事後プロジェクトに関しては、龍谷チャレンジ申請当初は今後2,3年かけて伏見区などの地域と連携して地域貢献活動に取り組んでいく方針だったが、気候会議を通してまずは気候会議のような環境問題について知れて、考えることのできる機会をつくりたいという想いが実行委員会メンバー内から出たことや、同時にそのような場をつくってほしいという声が参加者からも寄せられたため、方向を変えて龍谷大学の学生向けのプロジェクトをすすめることとした。その結果まずは、プロジェクトを立ち上げるにあたり、ものづくりを通して環境問題改善に貢献している施設を参考にして準備をすすめるために研修を行った。龍谷チャレンジが終わってからもプロジェクトを進めていくが、反省点として参加者の声を反映することは大切だが、もっと余裕を持ったスケジュールを組んでおければ龍谷チャレンジ期間中にもう少しプロジェクトを推進できたのではないかと感じる。来年度は参加者とともに事業をすすめていくことも考えると会議を10月や11月開催を検討していく。

(6)事業実施を通じて見出された特長

  1. ポイント1「地域密着型プロジェクトの推進」
  2. ポイント2「学生だからこそ貢献できることに取り組む」
  3. ポイント3「多角的な観点で物事を捉えられる機会を作る」

活動団体情報

代表者
龍谷大学学生気候会議実行委員会
関元 ちさと

連絡先
REC事務部(京都)

主な連携メンバー
気候ネットワーク、京都府地球温暖化防止対策推進センター、京都市、京エコロジーセンター、株式会社市浦ハウジング&プランニング大阪支店、あいとうエコプラザ菜の花館、川端商店

活動開始時期
2021年4月

主な活動地域
龍谷大学深草キャンパス