東近江自然活用プロジェクト(2022年度龍谷チャレンジ採択事業)

(1)事業の概要

滋賀県東近江市奥永源寺地域では約600年の歴史をもつ地場産業の政所茶が存続の危機に陥っている。政所茶を存続させるためには採算性を向上させる必要があり、私たちは東近江市にある耕作放棄地の利活用に着目。耕作放棄地で栽培したハーブを政所茶と掛け合わせた「政所ブレンド茶」の開発により、政所茶の新たな付加価値の創出、採算性の向上、耕作放棄地の課題解決を目指す。

(2)事業実施に至る経緯と背景

茶工場の採算性向上を考える際に、昨年の取り組みで実施されなかった政所茶とハーブを掛け合わせた商品の開発に目を向けた。政所茶を生産する地域は深刻な獣害問題を抱えている。厳しい環境の中でも獣害につよいハーブなら育てることができるのではないかと考え、採算性向上のためにまずは政所茶の中で一番単価の安い平番茶とハーブを掛け合わせたブレンドの開発が行われた。その後政所茶生産地域でのハーブ栽培に向けて他事例のヒアリングを行った。

(3)事業実施項目

  1. 政所ブレンド茶の開発
    私たちは政所茶の平番茶とハーブを掛け合わせた商品である「政所ブレンド茶」の開発に取り組んだ。開発した商品は夏用ブレンドと冬用ブレンドの2種類である。
  2. 地域の方とマルシェ参加
    7月に地域の方と滋賀県彦根市にある珈琲店「きみと珈琲」さんが主催するマルシェに茶縁むすびのブースのお手伝いで参加した。このマルシェでは地域の方が開発した政所ブレンド茶の販売も行った。私たちが開発した夏用ブレンドの政所ブレンド茶は8月に行われた草津ファーマーズマーケットで販売した。2回のマルシェはどちらも滋賀県内で開催していたため、販売時には滋賀県内で生産されている政所茶についても積極的に紹介した。
  3. 試飲会の開催
    2種類の政所ブレンド茶を改良するために滋賀県東近江市社会福祉協議会で試飲会を開催した。試飲会ではアンケート調査を行い、味や飲みやすさについて回答していただいた。
  4. 和束町活性化センターのヒアリング
    お茶の産地でハーブを栽培している事例として和束町でヒアリングを行わせていただいた。対応していただいたハーブ担当の方からハーブ栽培で注意すべきことや無農薬商品需要について教えていただいた。
  5. 五色台ハーブ園の見学
    ハーブ販売を行っている事例として香川県高松市にある五色台ハーブ園の担当者の方にヒアリングを行った。ヒアリングでは政所茶の生産地でハーブを栽培する際に注意すべき事柄について質問させていただき、ハーブを栽培しているビニール園の見学などを行った。
  6. 政所ブレンド茶の改良
    前回開発したブレンド茶をヒアリングでいただいたご意見などをもとに改良した。ヒアリングよりターゲットを30代以上の女性にしぼり香りが良く飲みやすさを重視したブレンドに改良した。

(4)事業の成果

  • 政所茶は他の日本茶と同様に、玉露・煎茶・平番茶等様々な種類の茶が存在し、中でも平番茶は価格帯が低いものである。その平番茶とハーブとのブレンドを開発したことで付加価値の創出ができた。また、地域のハーブになじみの無い方にも好評をいただいたことで、政所茶の新たな価値を提供することができた。
  • 政所地域は高齢化が進んでおり、協働して取り組んでいる茶縁むすびさんが地域の方のお茶を代理で販売しているという状況がある。その中で、マルシェではマンパワーとして政所地域に貢献できた。また、学生が開発したブレンドとして新たな魅力を付け加えることができた。マルシェでは私たち学生が開発したブレンド茶を5つ売り上げることができた。
  • 上記、マルシェ同様マンパワーとして貢献できたことに加え、地域の方へのアンケート調査において30件の回答をいただき、政所ブレンド茶に対するデータを提供することができた。また、同時に学生にもアンケートをとったことで年代別の比較を行うことができた。
  • 和束町でのヒアリングでは、ハーブの育成事例について学ぶことができ、政所地域ではどのように育てていくべきか具体的にアドバイスをいただくことができ、政所地域へ情報提供で貢献することができた。また、和束町の平番茶もいただいたことで、政所の平番茶との違いを明確に感じることができ、ブレンドの開発に役に立った。
  • 五色台ハーブ園でも、ハーブの栽培時に関することをお伺いし、政所に情報を提供することができた。また、ハーブブレンド商品の市場価値についてもお伺いし、今後政所地域ではどのように販売していくべきかについて学ぶことができた。
  • 政所ブレンドの改良では、以前いただいたアンケートでのご意見や各地でのヒアリングを踏まえて、改良することができた。また、今回の改良で政所茶を知っている人とハーブに興味を持って政所ブレンド茶を飲まれる方で印象が変わることがわかった。改良後のブレンドはまだ販売できていないため、市場ニーズ等を把握することはできておらず、今後実施予定である。

(5)課題と今後の展望

今回の事業では、政所ブレンド茶と耕作放棄地の活用に関して、それぞれ課題が存在する。政所ブレンド茶に関しては、販路が狭く味にも不安が残るという課題を持っており、飲みやすさを追求した政所ブレンド茶をさらに追及する必要がある。耕作放棄地の活用に関しては、奥永源寺地域でのハーブ栽培を実現するために、冷害対策やどの種類のハーブを育てるのかを、奥永源寺地域の特徴を踏まえながら考える必要がある。
今後は、政所ブレンド茶の飲みやすさを追求するため、いくつかコンセプトを決めてブレンド茶を改良していく必要がある。男女で味の嗜好が違ったことから、男性向け・女性向けのブレンド茶を作るのか、男女関係なく好まれるクセの少ないブレンド茶を作るのか、細かく設定しながら政所ブレンド茶を改良をしていかなければならない。また、奥永源寺地域の耕作放棄地で栽培するハーブを具体的に決め、それを基に政所ブレンド茶を作っていく必要がある。地域の方々と話し合いを進めながら、耕作放棄地解消の実現に向けて動いていきたい。

(6)事業実施を通じて見出された特長

ポイント1「地域の方との協働」
ポイント2「フィールドワーク」
ポイント3「アウトプット」

活動団体情報

代表者
循環型社会構築ブロジェクト
神戸 晟太

連絡先
REC事務部(京都)

主な連携メンバー
東近江市役所農林水産部、政所茶生産振興会

活動開始時期
2022年4月

主な活動地域
滋賀県東近江市政所町、滋賀県東近江市愛東町