(1)事業の概要
社会福祉法人南山城学園が運営するカフェ「さぴゅいえ」との共催でこども食堂を開催。貧困状態や孤食状態にある家庭・子どもをターゲットに宇治市役所と連携することで、支援を必要としている子どもに確実に支援を届けられるこども食堂の企画設計と運営を行った。また、食事だけでなく職員や大学生と関わる(遊ぶ等)時間を設けることで、子どもの居場所や交流の場としての機能の醸成も目指している。
(2)事業実施に至る経緯と背景
南山城学園の職員の方へのヒアリングと福祉施設の現場体験を通して、「利用者さんは地域社会から隔離されているのではないか」という仮説を持った。職員の方も地域と利用者さんの間には壁があり、地域の人と利用者さんの交流機会の創出が必要であると話していた。そこで、新しく子ども食堂の立ち上げを検討していたA型就労支援事業所カフェさぴゅいえで「地域の子どもは地域で支える」をコンセプトに支援を必要としている家庭に確実に届けつつ、利用者さんと地域を繋ぐ子ども食堂の開設を行うこととなった。
(3)事業実施項目
(1)周辺の子ども食堂調査
こども食堂を開設するにあたって、さぴゅいえ周辺の子ども食堂を調査し現在の子ども食堂における課題を整理した。
さぴゅいえは宇治市内の子ども食堂へのヒアリング、学生は城陽市で行われている「あんさんぶる城陽子ども食堂」への参与調査を中心に行った。
さぴゅいえは当時(2025年8月時点)宇治市内にあった11ヶ所の子ども食堂のうち、6ヶ所の子ども食堂にヒアリング及びアンケートを行った。そこから見えた課題として、運営が厳しいこと、本当に必要としている人に支援が届いていないと感じること、子ども食堂同士の繋がりがないことの3点が挙げられた。
また、学生は地域福祉支援センター城陽で開催されている「あんさんぶる子ども食堂」に7月18日、8月22日、9月26日の計3回参与調査を行った。参加者数は保護者含めて20人程度とかなり多く、ご飯ができるまでの時間は子ども達同士で元気に遊んでいる姿が見られた。一方で、参加者は同じサッカークラブの友達とママ友などのケースが目立ち、児童館的な空間となっていた。子どもの放課後の居場所や地域交流拠点としては機能しているものの、支援を本当に必要としている家庭へ食事を提供できる状態とは言えなかった。また、食品ロスもかなり目立っていた。
(2)みねやま福祉会「マ・ルート」への訪問
10月3日に舞鶴市にあるみねやま福祉会の複合福祉施設「マ・ルート」へ訪問した。
さぴゅいえで子ども食堂を開催するにあたって、利用者さんにも子どもと関わってもらうことで利用者さんと地域を繋げる拠点にしたいという思いもあり、「ごちゃ混ぜ福祉」を行っているマ・ルートを訪問した。マ・ルートは、認定こども園と老人ホーム、障害者施設を兼ねた福祉施設となっている。そこで学んだことは以下の通りである。
- 我々は障害者などにフィルター(偏見)を貼っている
フィルターを貼ることでリスクを回避している(子どもがケガをする等)が、一方で、その関係性だからこそ生まれる可能性の芽も摘んでいる。 実際に、子どもと関わるようになったことで老人の介護レベルが下がったなどのエピソード(※)が複数あり、互い良い影響を与え合う事例も多い。 - マ・ルートにおける障害を持つ方や老人が子どもと関わり合うという関係は、障害を持つ方や老人が社会に必要とされているという自覚を持つことに繋がり、それが良い影響を生み出している
※詳しいエピソード内容などはこちらから↓(FM79.7 京都三条ラジオカフェ 10/11 OA)
https://radiocafe.jp/20130603/episodes/2025-10-11oa/?mode=results
(3)「宇治市役所」へのヒアリング
宇治市で子ども食堂を開設するにあたって、どれほどニーズがあるのか(支援を必要とする家庭がどの程度あるのか)、どのようにしたらそのような家庭へアプローチできるのかなどの相談のため、10月8日に宇治市役所こども福祉課へのヒアリングを行った(さぴゅいえ職員3名+学生2名)。そこで分かったことは大きく分けて以下の6点である。
- 支援を必要としている家庭は多く、ニーズはある
さぴゅいえで受け入れられる人数は10名前後を想定していたが、それ以上に案内したい家庭は多い。 - チラシを作成し宇治市役所へ渡せば、子ども福祉課の窓口から対象者へ子ども食堂を案内できる
- 開催日時を工夫する必要がある
生活保護費の給付は月の始めであり、月末は金銭的に厳しい家庭が多い。
休日は給食がないため、お昼を抜かざるを得ない子どももいる。 - 子ども食堂をはしごして生活している子供もいる
子ども食堂のネットワークの重要性。 - オープンな広報をしすぎると必要な家庭に支援を届けにくくなる
- 子ども食堂へ行くことで外部から偏見の目を持たれる可能性がある
提供方法の多様化(テイクアウト形式、配達形式など)の必要性がある。
(4)子ども食堂の実施
これまでに、10月31日(金)夜、11月29日(土)昼、12月19日(金)夜、1月30日(金)夜の計4回子ども食堂を実施(次回は2月27日(金)夜)。月1回、月末に開催しており、曜日と時間帯に関しては、参加者からの要望もあり金曜日の夜に開催している。提供方法はお弁当形式となっており、持ち帰りとカフェさぴゅいえ内で学生や職員と一緒に食べるイートインの2形態に対応している。
最初の2回は当日キャンセルが2名ほどあったが、毎回平均して10名程度が参加し、リピートしてくださる家庭も増えた。18:00-18:30頃を目安に食事提供となり、それまでは大学生や職員の方とトランプやジェンガなどで一緒に遊び子ども同士の交流を図っている。
この子ども食堂は、南山城学園が法人として申請している社会福祉協議会の京都地域福祉創成事業・わっかプロジェクトの助成金を活用しており、法人と運営している3つの子ども食堂(宇治・城陽・醍醐)でそれぞれ年10万円ずつを賄って運営している(+法人のフォロー)。
(5)コンソーシアム京都「第21回京都から発信する政策研究交流大会」出場
2025年12月14日に開催されたコンソーシアム京都主催の「第21回京都から発信する政策研究交流大会」に出場。
(4)事業の成果
- 支援が必要な家庭に支援を届けることができた。
1回目の子ども食堂では2世帯8名、2回目のこども食堂では2世帯9名、3回目の子ども食堂では3世帯9名、4回目の子ども食堂では3世帯11名。
計4回の子ども食堂で4世帯15名の対象者に食事を提供。 - 2回目の開催では、曜日を変えたこともあってかリピーターに加え新規のご家庭も参加された。
- 3回目の開催はクリスマスも近いということでテイクアウト形式は無しで、簡単なケーキなどクリスマスメニューを提供した。その際、1回目、2回目でテイクアウトしていたご家庭は来なかったが、4回目の開催でいつも通りのメニューに戻した際、 テイクアウトをされるご家庭がまた来て下さったので、子ども食堂における食事のテイクアウト提供はある程度ニーズがあることが分かった。
- 回を重ねるごとに子ども食堂への来訪者数は増えており、現状できる範囲 (店のキャパシティなどを踏まえた上で)は子ども食堂としての役割が十分に担えていると考える。
- 繰り返し来てくださる家庭の中には子どもだけで来てくれる家庭もあり、子ども食堂として一定程度信頼を得ることができている。
(5)今後の課題と展望
今回の事業での課題は大きく分けて3点ある。1点目は元々学生側が想定していた、さぴゅいえで働く利用者さんと地域を繋ぐ段階まで取り組みを進められなかったことである。2点目は持続可能な運営モデルとしての要素が不十分であるという点である。売上の全額を子ども食堂に当てる商品を販売してはいるものの、購入数が少なく結局補助金頼りになってしまうため、ニーズがあっても子ども食堂の回数を増やせない。カフェの受け入れ定員はスタッフを含め収容人数20人前後のため、宇治市役所として紹介したい家庭がいてもキャパシティの関係で支援を届けられない家庭があるため、回数を増やして分散させたい。3点目は周辺の子ども食堂とのネットワークが構築できなかった点である。子ども食堂をはしごして食いつないでいる子どもがいる現状がありながら、今回はこの点について有効的なアプローチができなかった。
今後は上記の課題について、さぴゅいえとの対話を重ねながらひとつひとつ解決に向けて取り組んでいく。その中でも、子ども食堂のネットワーク化に関しては工夫して行う必要がある。現在、さぴゅいえは支援を必要としている家庭中心の子ども食堂で収まっているが、友達同士の紹介やネットワークの構築などによって事前調査を行った子ども食堂のように地域交流拠点としての特色が強まってしまう可能性がある。子ども食堂のコミュニティは不可逆性が強く、支援が必要としている家庭に確実に届くように、支援と交流のバランスを慎重に取りながら活動を続ける必要がある。
(6)事業実施を通じて見出された特長
ポイント1「行政の担当課を頼ってみる」
ポイント2「連携先と何度も顔を合わせる」
ポイント3「学生の意見は積極的に伝える・発信する」
お問い合わせ
活動団体情報
代表者
内藤 世理
連絡先
価値創造推進部
主な連携メンバー
カフェ「さぴゅいえ」(運営:福祉法人南山城学園)、宇治市こども福祉課
主な活動地域
宇治市