(1)事業の概要
有田川町でぶどう山椒を栽培する農家の現状を調査し、未利用資源の活用および情報発信を通じて、産地と消費者をつなぐことを目的に活動を実施した。産地調査を通じて、農家の高齢化や後継者不足、収益性の低さなどの課題を発見。商品開発を試みたが実現の難しさから断念し、代わりに情報発信に注力した。パンフレット作成や学校講演、SNS運用を通じて、ぶどう山椒の魅力や課題を広く発信し、関係人口の増加を目指した。
(2)事業実施に至る経緯と背景
有田川町のぶどう山椒農家は高齢化が進み、後継者不足や収益性の問題を抱えている。また、山椒の種や枝などの未利用資源が廃棄されている現状も確認された。そこで、未利用資源を活用した商品開発を試みるとともに、情報発信による認知度向上を目指して活動を開始した。調査や試作を重ねる中で商品化の難しさが判明し、方向性を情報発信に切り替えた。SNS運用、パンフレット作成、学校講演などを通じて、ぶどう山椒の魅力や課題を伝えた。
(3)事業実施項目
(1) 産地調査の実施
有田川町役場、JAありだ清水営農センター、篠畑農園、きとら農園などを訪問し、農家の現状や未利用資源の活用可能性、販路、後継者不足、価格変動などについて調査した。その結果、農家の高齢化や人手不足、未利用資源の活用困難、販路の課題を確認した。
(2) 商品開発の試み
山椒の種を活用したクレヨンや、山椒の木材を活用した高級箸の開発を試みた。試作品を作成し、カネカサンスパイスなどの協力を得たが、実現に必要なリソースが不足していたため、商品開発を断念した。
(3) 情報発信活動
パンフレットを作成し、ぶどう山椒の魅力や課題を紹介。インタビュー記事、レシピ紹介などを掲載し、有田川町役場、株式会社カネカサンスパイス、しろにしなどに配布した。また、Instagramを活用して産地訪問レポートや収穫体験の様子、山椒クイズなどを発信。2025年1月31日には有田川町立八幡中学校で講演を実施し、ぶどう山椒の講義やインタビュー動画視聴、試食体験を行った。
(4)事業の成果
第一に、産地調査を通じて有田川町のぶどう山椒農家の現状や課題を具体的に把握できたことが大きな成果である。農家の高齢化や後継者不足の深刻さ、収益性の低さが明らかになり、未利用資源である種や枝の活用可能性についても詳細なデータを収集できた。また、JAありだや地元農家との連携を深めることで、持続的な農業支援の基盤を築くことができた。
第二に、情報発信活動の一環としてパンフレットを制作し、有田川町役場や地元企業、観光施設などに配布したことで、ぶどう山椒の認知度向上につながった。さらに、SNSを活用し、産地訪問の様子や山椒を使ったレシピを紹介することで、一般消費者の関心を引きつける機会を創出した。
第三に、有田川町立八幡中学校において、ぶどう山椒の魅力やぶどう山椒農家の現状、地元産業についての講演を実施した。対象は中学生8名であり、農業の現場や地域資源の重要性について理解を深める機会となった。講演では、ぶどう山椒が持つ独自の特徴や、地域経済への影響について説明し、生徒たちに地元産業への関心を持ってもらうことを目的とした。講演後のアンケートでは、「地元の特産品について新たな視点を持てた」「農業の仕事について興味がわいた」といった前向きな意見が寄せられた。
また、副次的な成果として、プロジェクトを通じた関係者同士のネットワーク構築が進んだことも挙げられる。学生チームは藤岡ゼミと農家や自治体、企業との信頼関係を築き、将来的な協力体制の礎を築いた。
以上のように、本プロジェクトは産地調査、情報発信、地域啓発活動の三つの側面で成果を上げ、地域社会との連携強化にも寄与した。今後は、より実践的な商品開発や認知拡大に向けた取り組みを進めることで、ぶどう山椒の持続可能な発展を目指していく。
(5)今後の課題と展望
今回の事業での課題は、商品開発の実現に向けたリソース不足と、チーム内の役割分担の偏りである。特に、商品開発に関しては、試作を行ったものの製品化に至るまでの工程で十分な技術や資金が確保できなかった。また、プロジェクトの進行において、一部のメンバーに作業が集中し、均等な役割分担が難しかったことも課題として挙げられる。
その他の課題として、情報発信の継続性や効果測定の不足も指摘できる。SNSやパンフレットを活用した情報発信を行ったが、どの程度の効果があったのか、具体的な指標を設けて測定する仕組みが不十分であった。また、農家や地元企業とのさらなる連携強化の必要性も浮き彫りとなった。農家側の意見をより積極的に取り入れ、実際のニーズに即した施策を打ち出すことが求められる。
また、今後としては、情報発信活動を継続し、ぶどう山椒の認知向上を図ることが重要である。パンフレットの改訂・増刷を行い、配布先を拡大するとともに、関係団体との連携を強化し、より多くの消費者に情報を届ける仕組みを構築する。また、商品開発についても再評価を行い、実現可能なアプローチを模索しながら、プロジェクトの持続的な発展を目指していく。さらに、効果測定の仕組みを導入し、今後の活動の改善につなげることも検討していく。
(6)事業実施を通じて見出された特長
- ポイント1「実地調査を通じた課題の明確化」
- ポイント2「情報発信の有効性」
- ポイント3「地域や企業との連携の重要性」
活動団体情報
代表者
山本 廉太郎
連絡先
REC事務部(京都)
主な連携メンバー
有田川町役場 清水行政局、JAありだ清水営業センター、篠畑農園
主な活動地域
和歌山県有田川町、龍谷大学(深草・瀬田)