福学連携 木工福プロジェクト (社会連携・社会貢献部門)(2024年度龍谷チャレンジ採択事業)

(1)事業の概要

本プロジェクトは、京都府城陽市にある「社会福祉法人南山城学園 紡」と連携し、障害者福祉施設のコミュニティ拡大を目指している。「紡」では、施設利用者の余暇活動の一環として薪割りが行われている。私たちは、「この利用者が割った薪を通じて地域とつながることはできないか」と考え、薪の販売や販路開拓、新たな木製品の企画などに取り組み、障害者福祉施設のコミュニティ拡大に取り組んでいる。

(2)事業実施に至る経緯と背景

私たちが活動をする以前から先輩方が南山城学園と連携して活動を行っており、以前から関わりのあった南山城学園から福祉施設のコミュニティ拡大に向けた取り組みに向けての連携の話をいただいた。南山城学園の施設は住宅地から離れた場所にあり、施設においても職員と利用者のみと関わる人に変化がないという社会福祉施設の現状があり、その解決を通じてより施設利用者の生活の充実度を向上させたい南山城学園の目的があった。

(3)事業実施項目

(1) 紡での木工活動への参加

定期的に紡で活動されている木工活動に利用者の方々と一緒に参加し、薪割りのサポートや施設利用者との交流を行った。また、京都市内の木材会社へ施設職員の方と共に向かい、木工活動で使用する廃材の確保にも参加した。さらに、施設利用者と実際に割った薪を使用して焚火をし、マシュマロを焼いて食べたりなど交流した。

(2) 「龍谷大学サステナビリティ Days」への参加

龍谷大学で行われた「龍谷大学サステナビリティ Days 」に参加し、施設利用者の方とともに、木工製品の販売や薪割り体験を行った。ブースでは本事業の活動目的や活動内容、施設利用者が製作した製品であることをイベント参加者に知ってもらい、活動への理解と協力者を募った。また、施設利用者とイベント参加者の交流を通じて障がい者への理解を深めてもらうことができ、イベント参加者からは「素敵な活動ですね。」という嬉しいお言葉もいただけた。さらに、施設利用者においても普段の施設内での生活とは異なる非日常的な一日を過ごすことができ、普段見せたことのない表情も見られた。

(3) 「彩雲祭」への参加

南山城学園で開催された「彩雲祭」というイベントに参加し、地域の方と薪割り体験を行った。地域の方が施設に訪れることで多くの人と交流し、賑わいが生まれ、障がい者や福祉施設の理解を深めてもらうことが出来た。また、イベント当日は学生が施設利用者とともにイベントをまわり、学生と施設利用者の交流も深め、施設利用者にとって普段の施設とは違う生活を送った。

(4) 「第20回 京都から発信する政策研究交流大会 」での発表

大学コンソーシアム京都が主催する「第20回 京都から発信する政策研究交流大会」に参加し、福祉施設の現状や本事業の目的、活動内容、課題解決に向けた政策提案を発表した。他団体や審査員の教授との質疑応答や講評を受け取り、活動の発展へとつなげた。

(5) 「龍谷の森」での廃材獲得

瀬田キャンパスにある龍谷の森において、間伐した際に廃棄する木材を譲ってもらい、施設利用者が活動するための木材を獲得した。実際に学生も龍谷の森に行き、間伐を行った。

(4)事業の成果

(1)施設利用者の表情の変化

紡での木工活動や龍谷大学サステナビリティDays、彩雲祭への参加を通じて施設利用者の明るい表情が目立った。普段、関わる人や環境が変化しない閉鎖的な空間で生活していたものが、私たち大学生や地域に住む方々と交流し、普段とは異なった日を過ごすことによる新鮮さやいつもとは違う人と関わるイベント感など、施設利用者にとって楽しい活動だったのではないかと思う。施設職員の方からも「私たち大学生と一緒に活動することでいつもの生活ではあまり見られないような楽しそうな表情をしている。」といった意見もあった。

(2)施設利用者、障がい者の可能性の発見

実際に薪割りなどなどの木工活動を通じて、施設利用者が木工活動を得意としていることを初めて知ったり、これだけ活動できることを知った。私たち学生も障がいのある方がこれほど運動したり、作品を作れることを知らなかったので、自分たち自身の発見にもなった。また、施設職員の方からも「施設利用者の新しく得意なことを知れた。」という意見があり、施設利用者だけでなく障がい者の活動の可能性の発見ができた。

(3)障がい者理解の促進

イベントなどでの販売を通じて、来場していただいた方に障がいのある施設利用者の方が作った製品であることを説明すると、驚かれることもあり、障がいのある方が活動できるということを知ってもらえたのではないかと考える。また、「第 20回 京都から発信する政策研究交流大会」での発表では、社会福祉施設の現状や自分たちの取り組みなども発表し、障がい者の方々が秘めている可能性や「障がい者はできることが少ない」といった社会で言われているような常識を少し改善できたのではないかと考える。

(4)龍谷の森とのつながりの創出、環境問題への取り組み

龍谷の森と連携し、間伐材を手に入れられるようになったことで、南山城学園と龍谷大学のつながりを創出できた。また、龍谷の森の間伐材を廃棄することなく、新たな製品を作り出すために活用することで、龍谷大学としても環境への配慮を実現できる。

(5)今後の課題と展望

今回の事業での課題は、障がいのある高齢者(施設利用者)の方が製作した木工製品をイベントやマルシェで販売したが、それぞれ一度の参加で終わってしまい、継続的な販路の開拓ができなかったことである。障がいのある高齢者の方々による木工活動を通じたアップサイクルの付加価値をうまく社会に発信したり、社会や地域からあまり理解を得ることが出来ず、コミュニティの拡大において大きな成果を残すことが出来なかった。
今後は、活動を通じて新たに発見することができた施設利用者の方々の可能性をどのようにすれば最大限引き出すことができるのか、さらなる施設利用者の可能性を模索していきたいと考えている。また、今回の課題であった継続的な販路の開拓についても、イベントやマルシェへの参加などを通じて引き続き取り組み、障がい者に対する社会の理解を深めながら、社会福祉施設と地域との新たなコミュニティ創出を目指したい。

(6)事業実施を通じて見出された特長

  1. ポイント1「広く多様な人と関わることで、人の幸福感を向上させることが出来る」
  2. ポイント2「連携をする相手にいかに溶け込み、いかに信頼してもらえるかが重要」
  3. ポイント3「コミュニティを拡大したり、より多くの人とつながるためには、主体的に行動しないと話は進まない」

活動団体情報

代表者
山本 美桜

連絡先
REC事務部(京都)

主な連携メンバー
社会福祉法人 南山城学園、京都府内の木材会社

主な活動地域
社会福祉法人 南山城学園