水田転換畑における大納言小豆の剪葉栽培の試み

活動の概要

コメの生産調整(減反)が2018年度から廃止されることを受け、水田農業の高度化の具体な方策が求められています。農耕地の95%が水田である滋賀県では、転作の基盤となる1) 導入できる作物の選定、2)湿害対策、3)低コスト栽培についての学術知見が必要であり、私たちはアズキやラッカセイに着目し、安定生産技術の開発に取り組んでいます。中でも実需者からの増産の要望が多い大納言小豆(アズキ)の新たな栽培法の開発について研究活動を進めています。

早期播種(6月中旬:右側)と普通期播種(7月中旬:左側)の生育の違い

活動の内容

西南暖地の水田転換畑において新たに導入の可能性が高い農作物として、大納言小豆に着目し、その転換畑における生理生態学的特性にを明らかにすることを試みています。研究は龍谷大学農学部附属農場および滋賀県の生産者圃場において遂行し、実際栽培に近い条件における知見を集積することを目的としています。2016年度の試験では、近畿地方で7月中旬を播種期とする慣行法で課題となっている出芽苗立ちの不安定性を回避するために、慣行より1ヶ月早い6月中旬に播種してみました。一般に早期播種では、アズキの特性から蔓化することが多く、受光態勢が悪くなり、倒伏も起こして収量が低下します。そこで、開花前の8月中旬に地上30 cmの高さで茎葉部を全て刈取り(剪葉処理)、その後の受光態勢を回復させることを試みました。滋賀県の現地圃場では、6月中下旬の小雨による初期生育の遅延とそれによる雑草害が甚大となり収量減となりましたが、除草管理を徹底した本学試験圃場では、剪葉による受光態勢の向上と分枝着莢数の増加が認められました。2017年度も引き続き試験を継続して、大納言小豆の安定生産技術を開発したいと考えています。

早期播種における剪葉前(手前)と剪葉直後(奥)の茎葉部の様子

これまでの成果

早期播種と開花前の剪葉処理の組み合わせによる栽培技術に期待されることは、慣行の7月中旬の播種では、降雨によって播種時期を固定できないといった点を回避できることです。これまでの研究で、出芽苗立ちの安定性、剪葉による分枝発生数の増大、上位節着莢数の増加が確認されました。また、倒伏の軽減が認められ、これらのことからコンバイン収穫での歩留まりの向上や汚粒の減少といった効果が期待されています。より適切な剪葉の時期や程度についても明らかにし、新たな生産技術として導入できればと考えています。

剪葉1週間後に展開した上位葉は旺盛な蒸散を示す(青色は蒸散によって葉温が低くなっていることを示す)

茎から滲出する道管液を採取して,剪葉区の生育後期の根の活性を調査する

今後の目標・課題

剪葉機にはダイズで開発されている摘心機が応用できますが、大規模圃場でなければ導入は難しいでしょう。現在、中小規模の圃場で利用できる汎用性のある小型剪葉機の応用を検討しています。大納言小豆は和菓子の材料として地産地消も期待できます。水田転換畑におけるアズキの湿害を回避した安定生産の技術を開発して、水田農業の高度化の一助となればと思いながら研究を続けています。

11月上旬にサンプリングして成熟程度を調査する

受賞・助成採択実績

  • 日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(C)(2016、2017年度採択)
  • 龍谷大学食と農の総合研究所研究プロジェクト(2016、2017年度採択)
  • 東和食品研究振興会研究奨励事業(2017年度採択)
【他団体・グループとの連携について】連携可

連携先へのメッセージ

大納言小豆に限らず、水田転換畑を利用した地域特産農作物の生産の新たな取り組みに期待しています。本学農学部は2018年度に創設4年目の完成年度を迎え、大学院農学研究科も2018年度から食農科学専攻をスタートさせます。知識と技術と若い人材で地域農業にも貢献できればと考えています。

お問い合わせ

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活動団体情報

代表者
大門 弘幸
(農学部教授)
専門分野:作物生産科学

連絡先
龍谷大学農学部

主な連携メンバー
米森敬三・古本強・玉井鉄宗(龍谷大学農学部)、福嶋雅明(龍谷大学食と農の総合研究所)、JA滋賀蒲生町

活動開始時期
2016年4月

主な活動地域
本学附属農場(大津市牧地区)および東近江市蒲生地区