(1)事業の概要
これまで人と人を隔てていたアクリルボードをコミュニケーションツールとして利活用するため、以下3点の活動を行った。
- 感染防止対策の役目を終えて処分されるアクリルボードを回収する
- 回収したボードをそのままの形で利活用する方法の提案、素材を活かしたコミュニケーションツールの開発
- 身近な環境問題への意識を集め、リサイクルやリユースへの機運を高める
また、以下3点の目的を持って活動を行った。
- 環境問題につなげる
- 人と人をつなげる
- 関心をつなげる
(2)事業実施に至る経緯と背景
2023年5月、新型コロナウイルスが5類に移行し、環境省が新型コロナウイルスにかかわる廃棄物対策として、感染対策上不要となった資源について、可能なものは再資源化の実施を求めた。そのような中で、生産されたアクリルボードの9割以上が焼却廃棄される可能性があることが社会問題として顕在化しだした。
以上の社会的背景を知った龍谷大学の学生が当初7名集まり、本プロジェクトが始動するに至った。
(3)事業実施項目
1.プロトタイプ制作
作業はおもに本学瀬田キャンパス内のSteamコモンズFabエリアで行った。レーザー加工機による切り出し、UVプリンターによるデータ印刷など、様々な加工を試しながらプロトタイプを制作した。
2.学内コミュニケーションブース
本学深草キャンパスの和顔館1階スチューデントコモンズにブースを設置した。ブースにはテーブルにアクリル板を6枚ほど並べ、学生や教員が自由に書き込めるようなスペースを作った。
3. 地域の飲食店(ラーメンこんじき様)との関わり
深草に店舗を構えるラーメンこんじき様の協力のもと実際に使われていたパーテーションを回収させていただき、こんじき様からのご提案で駐車場の看板にアップサイクルしたのちお返しした。看板は現在も駐車場に設置いただいている。
4.レコード型アクリル名刺【Re:coryl(レコリル)】の作成
完成した名刺はレコードをイメージしたデザインになっており、ストラップとしても使えるようボールチェーンが付いている。中にはNFCタグを挟んでおり、スマートフォンをかざすと情報が出てくる仕組みである。入れる情報は自由に書き換えられるため、名前や所属の情報だけでなく好きな曲やSNSのリンクなども入れ込むことができる。
5.企業(株式会社HYTEK様)との関わり
株式会社HYTEK様は生活価値を高めていくためのマーケティング活動や施策の提案、制作、実施をされている会社であり、「声を妨げていた存在を、声を届ける存在へ」という趣旨のもと「アクリルメガホンプロジェクト」を行われている。同じ志を持つ仲間として情報交換を行いながら、有楽町で開催されていたアクリルメガホンプロジェクト展示に見学に行かせていただいたり、プロモーションビデオに出演させていただいたりなどの交流を行った。
6.子どもたちとの関わり
宇治で子ども食堂をされているTeaM U様とSNS上で繋がったことから始まった取り組みであり、子どもたちと一緒にアクリルの可能性を広げたいという思いで、実際にこども食堂を訪れ、交流を重ねた。その後TeaM U様からのご紹介で、深草で子ども向け広場を運営されているtetoteto様と繋がり、11月後半にはtetoteto様主催のおやこマルシェでアクリル板を利用したチャーム作りのワークショップを開催した。
(4)事業の成果
環境問題をつなげる
コロナ禍に学内で使用していたアクリル板6000枚のうち回収できるものを回収し、アップサイクルを行った。また、学内だけでなく地域の飲食店からもアクリル板を回収させていただき、アップサイクルしたのち還元した。これらはどちらも焼却処分が予定されていた資源であるが、回収・利活用することで資源を守った。
人と人をつなげる
人と人を繋げるコミュニケーションツールとして、学内コミュニケーションボード、レコード型アクリル名刺などのプロダクトを開発した。学内コミュニケーションボードでは本学学生、教授による多くのコミュニケーションが生まれた。また学生のSNS上でも取り上げられ、会話のきっかけとなっていた。レコード型アクリル名刺は自己紹介時における新たなコミュニケーションの在り方を生み出した。単なる自己紹介にとどまらず、多様な話題を引き出すことが可能になった。
関心をつなげる
学内には特設ブース、学外に向けてはヒアリングやワークショップ等を行ったが、関わっていただいた方々から「このプロジェクトを知ってアクリル板の存在や環境問題を意識するようになった」という旨の声を多くいただいた。tetoteto様主催のおやこマルシェでは合計88人の子どもたちに体験していただき、アクリルの可能性について一緒に考えることでアップサイクルへの関心を広げることができた。
(5)課題と今後の展望
今回の事業での課題は、”関心をつなげる”という点で、アクリル以外の資源のアップサイクルにも関心をもってもらうためのアプローチができなかったことである。2024年度からはプロジェクトを一新し、アクリルに限ることなく、他の資源にも目を向けた取り組みを行いたいと考えている。
さらに、マーケティングや経営戦略の視点も加え、起業を見据えた活動を行っていくつもりである。プロダクトの質を上げると同時に、捨てられる資源に価値を見出し、今回の事業で頂いたつながりも大切にしつつ、その想いをさらに多くの人に伝えられるよう、活動を続けていく。
(6)事業実施を通じて見出された特長
- ポイント1「文系×理系のメンバー構成」
- ポイント2「体験を提供する」
- ポイント3「明確なコンセプトの設定」
活動団体情報
代表者
#ツナガルアクリルプロジェクト
森 彩花
連絡先
REC事務部(京都)
主な連携メンバー
龍谷大学管理課、学長室(広報)、瀬田STEAMコモンズ、ラーメンこんじき、株式会社HYTEK、TeaM U、tetoteto、伏見区役所深草支所、京エコロジーセンター、國賀緋沙乃様(ウェブライター)
活動開始時期
2023年5月
主な活動地域
龍谷大学深草学