(1)事業の概要
私たちは龍谷大学学生による2021学生気候会議の実施及びとりまとめを主な活動内容とし1年間活動した。気候会議は欧州を中心に近年注目されている取り組みであり、無作為抽出によって選ばれた市民が住む地域や国がいかに二酸化炭素排出量をゼロにできるか、いかに持続可能になれるかを話し合い最終的に提言を作成する事をしている。私たちはこの気候会議を龍谷大学の学生間で実施し龍谷大学と京都市における気候変動問題と持続可能性に関して講義を受けながら話し合った。
(2)事業実施に至る経緯と背景
本事業を実施するきっかけとしては「気候市民会議さっぽろ2020」を知り、これを龍谷大学において実施したいと考えたことがある。運営は気候変動問題や持続可能性にかかわる分野を専攻とするゼミに所属しておりそれぞれが強い興味関心を抱いていた。
気候変動問題の解決に「市民を巻き込んだ対策」が重要であると考えており具体例として気候市民会議を知った。これを龍谷大学で実施することで学生を巻き込んだ対策が生まれ、興味を持つ学生が増えればと思い本事業を実施した。
(3)事業実施項目
(1) 運営メンバーに対するファシリテーション研修(2021/11/27)
気候会議を実施するにあたり運営メンバーがファシリテーターを担うことが決まっておりその準備として2021年11月27日にファシリテーション研修を実施した。深草キャンパスに有限責任事業組合まちしごと総合研究所代表の東信史様を講師としてお招きした。
研修においては「会議をいかに成功させるか」といったテーマについて会議当日の流れを模しながら運営間で話し合った。実際にファシリテーターを務めながら会議当日の流れを確認し改善案を出すことができスムーズな会議運営につながったと思う。
(2) 龍谷大学学生気候会議の開催(2021/12/5, 12/11)
ファシリテーション研修や事前準備を経て無事2021年12月5日と11日両日に龍谷大学学生気候会議を実施することができた。新型コロナウイルスの感染状況も落ち着いており深草キャンパス22号館203号室にて対面での開催ができた。開催までに立て看板の設置、授業での声掛け、ホームページの作成など様々な手段で宣伝したところ先端理工学部を除くすべての学部、学年、さらには留学生からなる46名から参加申し込みがあった。当日は就職活動や卒論作成、体調不良などで欠席者が出て23名の参加になった。
本事業は2日間に分けて実施された。それぞれのテーマとして1日目は「未来像を描く」、2日目は「今と未来をつなげる、自分と社会をつなげる」を掲げながら気候変動問題に対する対策などを話し合った。両日とも講師としてお招きした木原様と豊田様、国際学部の斎藤教授からの話題提供があり、それについて参加者同士で話し合い考えるという流れであった。会議の初めのほうは参加者同士若干の緊張や遠慮があったように感じたが、各班に1名以上いた運営メンバーがファシリテーターとして対話を促し、意見を引き出したり参加を促したりしたことにより、スムーズかつ高いレベルの対話ができた。
(3)学生気候会議後の意見提出や学生の意識の変化
2日間を通じてでた提案はLORCのスタッフの方が簡単にまとめて下さり会議終了後龍谷大学の学長室に提出をした。そちらをご確認いただき、龍谷大学がだした「龍谷大学カーボンニュートラル宣言」にて本事業のことについて言及していただくことができた。当初は、京都市にも本事業を通じてでた提案をまとめ提言として提出する予定であったが、2日間といった短い開催期間の制限の中、提言を作成できるような具体的な案が出なかったため、今回は断念することにした。また、会議終了後には参加学生の一部から「会議の後も何か学生で行動を起こしたい」や「会議で得たものをこのまま終わらせたくない、何か別の形で続けたい」との声があり、一部学生間でLINEのグループが作成された。
(4) 持続可能な地域創造ネットワーク全国大会で発表(2022/02/09)
気候会議開催後に講師としてお招きしていた気候ネットワークの豊田様から「持続可能な地域創造ネットワークの全国大会で龍谷大学での学生気候会議について話してくれないか」とご依頼をいただき政策学部の村田先生と運営から代表の松本が2022年2月9日に発表した。新型コロナウイルスの感染状況を鑑みて全国大会はZoomでの開催であった。私たちは全国大会の中で「ゼロカーボン地域への戦略づくり」のグループに参加し、本会議のプロセス、得たもの、課題などを15分ほど説明した。全国大会の参加者としては自治体の村長様、市長様、市議会議員様、NPOの代表様などがいらしていた。持続可能な地域創造に向けて市民、特に若者を巻き込むことのできる可能性のある気候会議を共有できた。
(5) 気候会議振り返り会(2022/02/28)
気候会議に参加していただいた学生のうち1名から「気候会議で出した提案がどうなったか知りたい、また、今度に関して話し合いをしたい」との声をいただき2022年2月28日に運営メンバーと参加者の中から3名ずつ合計6名の有志で気候会議振り返り会を開催した。当初は対面での開催を予定していたが新型コロナウイルスの感染拡大によりオンラインでの開催を余儀なくされた。振り返り会においては気候会議の振り返りと今後についての2点を主に話した。ファシリテーターとして代表の松本が当日の流れを企画し対話をリードした。
振り返り会においては気候会議に参加して感じたことを聞き、来年度以降開催されて場合に今回の反省を生かしより良い会議の開催ができるよう話し合った。また、会議参加者間で会議とは別のアクションを起こしたいと学生さんが声を上げてくれそれについても話し合った。その結果として現在参加学生の一部が参加しているLINEグループで有志の学生を募り新たな学生団体の案が進んでいる。
(4)事業の成果
- 参加者間での気候変動問題に関する知識の増加
- 参加者間において異なる学部、学年に所属する学生同士のかかわりの場を提供
- 参加者に気候変動問題に関して話し合うことのできる学生の紹介、今後行動を起こすきっかけとしての機会の提供
- 京都市に大学レベルで気候会議を開催することで生まれるメリットを共有、事例としての提供
(5)課題と今後の展望
今回の事業での課題は開催期間の短さ、会議開催途中における紙ごみの発生、会議終了後のアフターフォローの少なさなどがあげられるだろう。本来の気候市民会議は少なくとも2週間、平均的に見ても数か月にわたりじっくりと学び、提言を作成するが本事業は参加者や運営、教授陣の日程調整の結果2日間しか開催できなかった。2日間の限られた時間の中で多くの情報をインプットし、対話を進めることはできたがやはりもっと長期間の開催ができればより質の高い議論ができたのではないだろうか。次に会議開催途中に多くの紙ごみが発生したことも挙げられるだろう。本事業は環境問題に関して話し合うのにも関わらず会議のプロセスで貴重な資源である紙を多く使用しそれらの多くを廃棄してしまいすこし本末転倒ではないかとも感じた。そして最後に会議終了後のアフターフォローに関してだ。上で述べたように参加学生の一部でLINEグループが作成されたがしばらくの間特に何か発言があるわけでもなく、機能していなかったともいえる。今考えてみると運営側から何かしらのサポートがあってもよかったのではと思う。
今後の展望としていまだ気候会議を続けていくかは定まっていないがもし開催することになれば今回の反省を生かしてよりよい会議の開催につながればと思う。今回の反省や振り返り会で出た意見は教授陣に共有しており次年度以降に生かされることであろう。また、参加者の一部から「今度は運営として参加したい」といった声も上がっており、運営メンバーにも変化がみられるであろう。
(6)事業実施を通じて見出された特長
ポイント1「徹底した打ち合わせによる現状共有」
ポイント2「連携先の事情を考慮した活動」
ポイント3「学生以外に教授の協力を仰ぐこと」
活動団体情報
代表者
龍谷大学学生気候会議実行委員会
松本 泰地
連絡先
REC事務部(京都)
主な連携メンバー
気候ネットワーク、京都市総合企画局総合政策室、京都府地球温暖化防止活動推進センター
活動開始時期
2021年4月
主な活動地域
龍谷大学深草キャンパス