(1)事業の概要
イギリス発祥のウォーキングである「フットパス」に着目し、滋賀県東近江市の過疎化が進んでいる地域にて地域活性化を目標に活動している。春と秋に、君ヶ畑町や八日市市の太郎坊宮周辺にてフットパスイベントを開催した。また、夏と冬に八日市市の商店街の飲食店をはしごする「ほろよいフットパスイベント」を開催した。さらに、同じ目的を持つ団体にヒアリングを行うことやフットパスの活動が盛んな熊本にて研修を行うことで、イベント運営においての企画や広報のノウハウを学んでいる。
(2)事業実施に至る経緯と背景
日本の人口減少に歯止めが利かなくなる中で、過疎化が進む地域が問題になっている。高齢化や産業の停滞、文化を継承する担い手の不足など、様々な問題が浮き彫りとなった。そこで、地域の魅力を「歩くこと・食べる事・対話」を用いて地域内外に広める活動に着手する運びとなった。歩くことの健康だけを目的とするのではなく、地域の魅力発掘を目的とし、地元団体と協力し定期的にフットパスイベントを開催することとなった。
(3)事業実施項目
(1) 春と秋のフットパスイベントの開催
春に君ヶ畑町と八日市市の太郎坊宮周辺、秋に米原市番場と高野町と八日市市の太郎坊宮付近にてフットパスイベントを開催した。それぞれ地元の団体と協賛し、何度もフットパスコースを歩きの魅力発掘を行った。シビックプライドを向上させ、環境の整備に繋げるため、地域外から来た参加者が発掘した魅力を地元の方に伝える工夫を施した。広報は主にチラシ配布と公式SNSの呼びかけである。春の太郎坊フットパスイベントでは、老若男女様々な参加者があり、賑わいを見せた。好奇心旺盛な子どもの影響力が大きいことが分かった。秋の高野町を巡るイベントでは過去最高の参加申込者があったが、雨天であったためキャンセルが相次いだ。天候は今後の課題と言える。
(2) 「ほろよいフットパスイベント」の開催
我々は東近江市八日市市のシャッター街が問題となっている商店街に着目した。そこで東近江市役所商工労政課と八日市商工会議所青年部と協賛し、商店街付近の飲食店をはしごする「ほろよいフットパスイベント」を開催することとなった。夏に試験的に市役所、県庁、近江鉄道、コミュニケーションセンターの館長などを招き、意見交換会も含め第一回のイベントを開催した。5人1グループで3店舗周り、お店の間で八日市の観光名所を巡った。意見交換会での意見やお店の要望を斟酌し、冬に第二回目を開催した。県内だけではなく、県外からも参加者を招き、1グループ5人で2店舗周り、任意参加で忘年会を開催した。忘年会では日程の都合が合わなかったお店の料理を提供したり、ご当地サイダーを出したりした。協賛先との連携は十分行うことが出来たことが本イベントの成功ポイントの1つである。課題としては、予算に対して参加者が少ないことである。さらに、お酒を楽しんでもらうイベントであるため、基本的に都市部から来られる参加者にとっては泊りがけになってしまい、費用がかさむことがネックである。
(3) 「全国フットパスの集い2024in美里町」への参加
活動の認知度を高め、対話によるコミュニティ形成を目的とし、フットパスが盛んに行われている美里町で開催される全国大会へ参加した。本大会に参加する中で、イベントを開催する際の企画や広報、運営の仕方についてのノウハウを学んだ。また、新たに同様の目的を持つ団体との協力関係を築くことができた。我々と同様の活動をしている学生と対話する中で、何度も協力先の地域団体を訪問し話し合いを重ねていることが分かった。今後は地域にさらに寄り添い、関係性を強化することが目標としてあげられる。
(4)事業の成果
近江市の過疎化が進んでいる地域を中心に関係人口を増加することに成功したことが挙げられる。関係人口とは、地域のファンになり旅行に来ることや、地域となんらかの関わりがある人のことを指す。関係人口の増加によって、地域の文化の継承が期待でき、実際に我々はその担い手になることができた。また、同じ目的を持つ団体との連携の強化も成功した。これによって、活動の輪が広がり、滋賀県を巻き込む形で本事業を啓発することができている。
(5)今後の課題と展望
1つ目は、フットパスという言葉自体普及できていないことである。滋賀県東近江市と言えばフットパス、と言われるほどのブランド化を目指す。具体的にはイベントに中高生を積極的に招いたり、出前授業をしたりして東近江市の教育にフットパスを組み込むことが挙げられる。
2つ目は、イベントの広報活動に限界を感じていることである。チラシを作成し配布することや公式SNSに掲載するなどをしても人の目に留まることは限りなく少ない。しかし、協力関係を結んだ他団体での広報は、比較的効果があった。今後はイベントの参加者のニーズに合わせ臨機応変に対応していくとともに、新しい広報先の創出に尽力する。
3つ目は、過疎化が進んでいる地域をイベントの開催地に設定しているため、一般参加者は当然、我々も気軽に訪問することが出来ない。何度も訪問しコースを歩くことで地域の魅力発掘や、地元の方との関係を強化したい。しかし、交通の便が良い地域でイベントを開催するにしても、過疎化が進んでいないため趣旨から外れてしまう。
以上の課題を解決した上で、事業のシステム化をし、次の代に伝えていきたい。
(6)事業実施を通じて見出された特長
- ポイント1「滋賀県東近江市にて食べる・歩く・対話を用いて地域活性化」
- ポイント2「東近江市の関係人口を増加させる」
- ポイント3「東近江市にてフットパスのブランド化」
活動団体情報
代表者
柴田 美怜
連絡先
REC事務部(京都)
主な連携メンバー
東近江市商工観光部商工労政課・環境部森と水政策課、水地師のふるさと高松会、番場の歴史を知り明日を考える会、滋賀県ウォーキング協会、美里フットパス協会、日本フットパス協会、八日市駅周辺の飲食店、北九州大学地方創生学群廣川ゼミ、雪野山の森・里山クラブ
主な活動地域
滋賀県