活動の概要
地域で暮らす知的障がいのある人たち約40人が、年間16回程度通学し、学生とペアを組んで、2コマの授業を選択します。学生は、準備と振り返りを含めて30回授業とし、単位認定を行っています。
知的障がい者対象のオープンカレッジに取り組んでいる大学は全国で数多くあります。しかし、通年の正課授業(火曜の午後、各教員がリレー式で担当する「障がい児者学習支援特講」、「音楽療法特講」、「演劇療法特講」)で組織をあげて取り組んでいるのは、本学が日本初で、日本唯一です。4年間で卒業とし、毎年、修了証を学長名で出しています。
活動の内容
特色と意義については、以下の4点をあげることができます。
- 学生があふれている火曜日の午後通学することに意義があります。
- 年間通して学生とペアになり、距離感の遠近、葛藤の深化や克服がひとつの物語となることに意義があります。
- 多くの教員が関わることにより、「大学における真の知とは何か」との問いを共有化することに意義があります。
- 大学の風景に知的障がい者がいて当たり前という文化が定着することに意義があります。
活動の効果として、知的障がい者自身が大きな影響を受け、生活関係拡大や自立の意欲を高めたこと、学生たちの「偏見自覚力」、「共感・受容力」、「人間価値認識力」、「権利保障認識力」、「ノーマライゼーション認識力」、「大学資源開放認識力」が高まったこと、教員が授業内容の本質を絞り込んで具体例を挙げて伝える“教材や教育方法”が徐々に工夫されていったこと、また、教員の心性の内奥にある優生的人間観を根底から揺さぶり、平等な人間観を培う契機とする機会となったこと、があげられます。
講義の様子
パソコン実習の様子
これまでの成果
卒業生は100人を超えます。同窓会も毎年5月に実施しています。発表会などの成果は地域住民にも公開しており、地域住民との共同企画であるソーシャルダンスに卒業生が参加して交流しています。大学という開かれた場の持つパワーによって、障がいのある人がエンパワメントされます。その過程に学生が感化されます。プラスの相互変容が始まります。次の学生の言葉はそれを語っています。「私に知的障がいの叔父がいて、小さいころからびくびくしていました。ペアになったKさんのおかげで、偏見をもっていたことを叔父に謝りたいと思いました。Kさん、ありがとう。」
この活動の過程で、2006年度に、知的障がい者が働くカフェ「樹林」が、キャンパス中央に開設されました。
演劇発表会の様子
今後の目標・課題
重い障がいのある人たちが、知識労働についている障がいがない人たちと日常的・継続的・蓄積的に交流できる社会こそ、ヒューマンで「ふつう」の社会であるといえます。私たちの希望は、《すべての大学、高等教育機関に重い知的障がいのある人が役割を持って通い交流できるようになること》である。特に大学では、真の「インテリジェンス」とは何か、「ウィズダム」とは何か、を知的障がい者の尊厳を具体的実践から学ぶことを通して問い続けていきたいと考えます。
受賞・助成採択実績
- 2006年度、文科省「特色ある大学支援プログラム」採択
- 2014年度、糸賀一雄記念賞 受賞
お問い合わせ
活動団体情報
代表者
加藤 博史
(短期大学部)
専門分野:社会福祉学
主な連携メンバー
京都府、奈良県、大阪府の知的障がい者通所福祉施設、短期大学部社会活動センター、NPO団体など
活動開始時期
2002年
主な活動地域
龍谷大学深草学舎