桃陵団地の繋がりの再構築と新たな繋がりづくり(2021年度「龍谷チャレンジ」採択事業)

(1)事業の概要

伏見区の南浜学区にある桃陵団地で、コロナ禍で希薄化した住民同士の繋がりを再構築し、生きがいにつなげてもらうことを目標に住民の方の発案で感染対策を講じた上で毎月体操を行うほか、会わずにできる取り組みとして月1回の団地通信の配布や週3回の公式LINEの配信を行い、その内容から外出のきっかけの創出を図りました。また、スマートフォンの使い方が分からない方向けにスマホ講座を行いました。

(2)事業実施に至る経緯と背景

桃陵団地は近年高齢化が進み、転居や死亡により世帯数が減り、つながりが希薄化し、孤独死が多発したことから、以前はカフェやモーニングなどのイベントを行い、住民同士の繋がりの創出を図っていました。しかし新型コロナウイルスの感染拡大により、中止が余儀なくされ、外出を自粛し、孤独になっている住民の方が増えたことが背景となり、コロナ禍に応じた、会わずに行える活動をメインに交流の促進を図りました。

(3)事業実施項目

(1) 住民の方の発案による体操イベントの実施

住民の方からの体操がしたいという声から、昨年の4月から毎月第4木曜日の午後(緊急事態宣言等で中止になった月もあり)に集会所で開催しました。
この取り組みを通じて住民の方同士で定期的に顔を合わせる機会が生まれることや、引きこもりがちな生活が改善されることを目的としました。具体的には、猛暑や極寒の時期は集会所内、それ以外は集会所横の屋内で行い、検温、消毒を実施た上で椅子と椅子に間隔を開けた上で、講師の方に来ていただき、座ってできるものをメインに30分程度体操を行いました。

(2) 団地内情報発信ツール「団地通信」の活性化

コロナ前はいつもイベントに来てくださっている方には日程の確認や活動内容の共有、イベントに来ていない方にははうすまいるの活動に興味を持ってもらうことを目的に月に1度全戸配布していましたが、コロナ禍に入り、直接会って行うイベントが減ったことから、イベントの周知、外出のきっかけづくり、頭を動かしてもらうことを目的に内容を充実させました。
具体的には目を引いて手に取りやすいようにA3用紙のカラー印刷にし、写真やイラストを用いる、文字を大きくし見やすくなるように工夫しました。さらに今まで載せていた記事に加えて脳トレや料理などの家の中でも楽しめるような内容、そして季節などの時事的な記事や伏見地域の情報などを載せて外出のきっかけとなるように工夫をし、住民の方により楽しく読んでいただける内容にしました。他にもはうすまいるのメンバーやご卒業された先輩などの情報を載せました。

(3) 公式LINEの活用とスマホ講座の実施

コロナ禍でスマートフォンからスマホに乗り換えた住民の方が増えたことをきっかけに、住民の方とオンラインでつながるきっかけを作るために「はうすまいる公式LINE」を開設し、団地通信より頻度の高い情報発信を行いました。この取り組みを通して、住民の方とオンラインで仲を深めることや、外出のきっかけにしてもらうこと、スマホ覚えてもらい生きがいにつなげてもらうことを目的とし、今後団地のグループラインを作り住民同士でやり取りができる環境を作りたいと考えています。
具体的な取り組みの内容としては6月から現在まで月・木・金の週3回、イベントの告知や健康の情報、外出のきっかけになる情報、脳トレ、料理のレシピなどを配信していたほか、住民の方とメッセージでやり取りを行い、ご要望や感想を頂いていました。
また、スマホの使い方が分からない、教えてほしいという声から、スマホ講座を10月・11月・12月の3回実施しました。スマホ講座では個別にスマホの操作について住民の方が困っていることを聞き、解決策を提示することにより解消させていました。また、ある程度使い方が分かる方には便利な機能も紹介し、よりスマホを活用してもらえるようにしました。また、公式LINEの登録方法も教えることで登録者の増加を図りました。

(4) 地域のお店との連携

私たちの活動だけでは、コロナ禍ということもあり、住民の方と直接関わるのには限界があるので、住民の方も利用する地域のお店と連携して、外出のきっかけを作ろうと考えこの取り組みを行いました。主に桃陵団地から近い大手筋商店街周辺の飲食店等に協力をお願いし、団地通信や公式LINEにお店の情報や住民の方が利用したくなるサービスを記載しました。この取り組みにより住民の方がお店の人や常連のお客さんとのコミュニティができること、引きこもりがちな生活が改善され生きがいにつながることを期待しましたが、実際には行ったことのないお店に一人で行くことや外出に対する抵抗があったこと、ご飯を食べに行く需要があまりなかったことから、お店を訪れる住民の方はほとんどおらず、失敗に終わりました。

(5) 野菜市の開催

これまで体操をメインに対面での取り組みを行ってきましたが、これだけでは住民同士の繋がりが弱く、新しく来てくださる住民の方も少ない状況にありました。そこで、気軽に集まれるイベントを行い、コロナ前のようなにぎやかな雰囲気を作り、多くの人に関わってもらおうと考え、野菜市を開催しました。
具体的な取り組みの内容としては、野菜の他に米やイチゴ、地域のお店のパンを販売しするほか、書初めブースや子供ブースを設け、ちょっとしたお祭り感も演出しました。野菜の準備には住民の方にも手伝っていただき、準備を通した住民の方同士のコミュニケーションも図りました。
この取り組みを通して、外出のきっかけを作ることや今まで来られなかった住民の方とつながること、住民同士の交流の場づくり、さらには公式LINEの新規の登録者を獲得することを目的としました。

(4)事業の成果

  • 住民への電話や公式LINE、団地通信といった会わずに行える取り組みを行ったことにより、イベント等で「龍谷大学のはうすまいるです」と住民の方に挨拶する際に、ほとんどの人が知ってくれていて「いつもありがとう」と言ってくれるようになった。
  • 体操はこれまで延べ45名の方に来ていただき、公式LINEでは6月の開設後10名の方に登録して頂きやり取りをすることができた。また、野菜市には30名以上の方に来ていただくことができました。
  • 体操や野菜市を通して、参加された住民の方同士が仲良くなり、体操に来ていない住民の方がいると電話をかけるといったように、連絡を取り合う関係になったほか、イベントの際に差し入れやご飯に連れて行って下さるような住民の方も生まれました。
  • 体操を通して毎回会場の運営を手伝ってくださる住民の方がいらっしゃり、活動の方針を社会福祉協議会の方とともに相談する関係になることができました。

(5)課題と今後の展望

今回の事業での課題は、体操の継続性です。これまで体操を私たちが主体となって行ってきましたが、理想は、住民同士で主体となって体操を行うことであり、住民の方々の主体性が求められます。しかし、今年の3月に活動を終了することを住民の方に伝えた際に「大学生がいなかったら体操どうなってしまうの」といった心配の声が多数あがり、実際に主体となってくださる住民の方も一人しかおらず、これから私たちがいなくても続けられるような体操の在り方が課題となっています。
また、今後体操をするにあたって、私たちの関わり方も課題となっています。「Ryu-SEI GAP はうすまいる」としては3月をもって活動終了になりますが、上記のように住民だけでの体操をする体制が整っておらず、これからどのように関わっていくかが課題となっています。
今後ははうすまいるとしての活動が終わった後もボランティアのような形で、もう1年間体操の活動を続けようと考えています。その際にご卒業された私たちの先輩の方体操を続けて方々の協力を募り、住民の方とともに、住民の方が中心となった運営方法を模索します。そして1年後には住民の方主体で体操を継続して行える体制にしたいと考えています。
また、スマホ講座も行い、住民の方のLINEグループを作るといった取り組みを行うことで、スマホを使って簡単に住民の方同士が連絡を取ることができるようになり、より多くの繋がりの創出につなげていければと考えています。

(6)事業実施を通じて見出された特長

ポイント1「会わないコミュニティ」
ポイント2「活動主体の在り方」
ポイント3「枠にとらわれない活動」

活動団体情報

代表者
Ryu-SEI GAP はうすまいる
南條 海成

連絡先
REC事務部(京都)

主な連携メンバー
桃陵団地連合自治会、南浜学区社会福祉協議会、京都市伏見いきいき市民活動センター

活動開始時期
2017年8月

主な活動地域
京都市伏見区桃陵団地とその周辺地域

03すべての人に健康と福祉を プロジェクト一覧