(1)事業の概要
本事業では、商店街に人の流れを作り活気を生み出すことを目的に、ふれあいライブラリー、季節イベント、コミュニティカフェの3つの取り組みを展開した。
月に一度開催しているふれあいライブラリーでは、商店街内にお借りしている空き店舗を利用して、地域住民から寄贈していただいた本を用いた企画を実施し、毎回一定数の子ども達が参加してくれている。そして、季節イベントでは、臨時出店や商店街の店主と協力した企画を実施している。また、今年度の新たな企画としてコミュニティカフェを開催し、地域住民と店主とのつながりの強化を図った。
(2)事業実施に至る経緯と背景
淀本町商店街は、駅の高架化により人の流れが変化し商店街の利用者が減少したことや、店主の高齢化により閉店した店舗が増加したことで、商店街全体の活気が失われた。
このような課題を解決するため、再び地域住民で賑わう商店街を目指し、ふれあいライブラリーや、季節イベントを実施するなど、本事業を始動した。今年度は、新たな連携先との共同イベントの実施や各店舗との更なる関係の強化によって、新たな交流が生まれることを目標に掲げた。
(3)事業実施項目
(1) チラシの作成・配布
ふれあいライブラリーの実施やイベント開催にあたり、日時・場所・イベント内容などを記載したチラシを作成した。そのチラシを商店街の各店舗に掲載していただくと共に、付近の小学校や児童館へ協力を仰いで配布していただいた。そうすることで、より多くの地域住民にイベント内容を告知し、商店街に足を運んでもらうきっかけとなるよう努めた。
この活動を通して、淀本町商店街で実施しているふれあいライブラリーやイベントだけでなく、我々の活動について興味を持ってもらうきっかけとなった。
(2) ふれあいライブラリーの開放
月に一度、お借りしている商店街の空き店舗を利用し、地域住民から寄贈していただいた本を用いてふれあいライブラリーを実施している。毎月、本の貸し出しをはじめ、本のくじやスピン作り、ブックカバー作りなど、本に関連した企画を実施することで、継続利用につながるように工夫している。
(3) 季節イベントの開催
今年度の季節イベントとして、8月に夏祭りイベント、10月にハロウィンイベント、12月にクリスマスイベントを開催した。
8月のイベントはお菓子釣りや輪投げ、写真立てづくりなどの子ども達の関心をより集められる企画を考案し、イベントを開催した。また、保護者をはじめとする大人にも淀本町商店街を再認知していただくきっかけづくりとなるよう努めた。
10月のイベントでは、ジャック・オー・ランタンづくりや宝探しゲームといった、商店街を巡ってお菓子をゲットする企画を実施した。昨年度も商店街を巡るイベントは開催したが、店舗の外を巡るのみであったため、参加者と店主との直接的な関わりを実現できなかった。そこで今年度の企画では、各店舗の中に参加者が入れるよう協力を仰ぎ、参加者と店主の直接的な交流の創造を目指した。
12月のイベントでは、クリスマスカードの作成や写真スポットの設置、商店街・地域の方々のご協力を得て抽選会を実施した。抽選券を商店街の店舗に事前配布し、商店街の店舗を利用した際に獲得できる仕組みとすることで、各店舗の利用促進を図った。
(4) 臨時出店の実施
8月と12月のイベントでは臨時出店として、野菜市とスイーツ・飲料販売を実施した。この取り組みは、商店街の認知度向上や年齢を問わず多くの人が商店街を訪れるきっかけづくりを目的に取り組んだ。
野菜市では山末農園さんのご協力のもと野菜を販売、スイーツ・飲料の販売では淀本町商店街に出店されているX.COFFEE(バイドット・コーヒー)さんにご協力いただいたことで、多世代の方々に商品を購入していただくという、地域住民の足を商店街に向けることができた。
(5) SNSの活用
今年度のイベント情報を知りたい方に加え、これまで商店街や当団体の取り組みについて知らなかった方に向けてInstagram、Facebookを活用し、商店街やイベントの宣伝に取り組んだ。実際に、SNSの情報を見てイベントに来てくれる子ども達もいた。
(6) コミュニティカフェの実施
今年度の新たな企画として「ふれあいカフェ」を実施した。昨年の秋に新たにオープンしたナッツバタードリンク専門店のThe Seedさんにご協力いただき、コミュニティカフェを開催した。今回は試験的に実施したこともあり、ふれあいライブラリーに来ていただいた保護者の方々にお声掛けして参加していただき、新たなコミュニケーションの機会を創出した。
(4)事業の成果
- ふれあいライブラリーの成果
名札を作成し、相互に顔と名前を覚えた関係性の構築や、本を読むだけでなく子ども達が自由に過ごせる空間を形成することで、我々の活動のリピーターが7人できた。また、それをきっかけに保護者の方々がコロッケを買うなど、商店街の利用にも繋がった。 - 季節イベントの成果
チラシ配りをはじめ、普段から挨拶や言葉を交わす中で、店主との信頼関係の構築に取り組んだ。
ハロウィンのイベントでは、子ども達が実際に店舗内に入り、店主と直接的に関われるようになっただけでなく、店主が独自に仮装をしてくださるなど、より関係性を深めることができ、我々と商店街全体でつくりあげていくイベントとなった。その結果、約80名の参加者が集まった。 - ナッツバター専門店The Sheedとの連携
昨年の秋に淀本町商店街にオープンしたナッツバター専門店の店主と我々が連携し、店舗内のレンタルスペースを活用したコミュニティカフェを開催した。12月の季節イベントでは、抽選会の際にお店の商品を景品として提供いただいた。
また、3月に独自に実施される桜まつりへの参加をはじめ、今後も協力関係を構築していくこととなり、活動の幅や可能性が広がった。
(5)今後の課題と展望
今年度の取り組みを通して、これまで取り組んできた本を中心とした商店街活性化の発展性に限りが見えてきたことを課題として挙げる。また、つながりの拡大や店舗独自の取り組みが始まろうとしている今、学生である私たちに求められる役割は何か、その中で実現可能なことは何か、を改めて見つめ直すことが必要であると考えている。さらに、私たちの活動・商店街・地域住民とのつながりが持続的なものになるよう、中長期的な関係性を構築していくことが求められている。
今後は、本を活用するというアプローチ方法を再考し、より地域住民に日常的に利用される商店街を目指していく。そのために、今年度生まれた新たな関係性を強化していくと共に、既存の店舗が中心となった活動を展開することで、商店街におけるネットワークを構築する。そして、商店街が主体となり、地域における新たな可能性を模索していく、という地域コミュニティの中心となる拠点を目指す。そのきっかけづくりを、私たちが活動することで担っていこうと考えている。
(6)事業実施を通じて見出された特長
- ポイント1「地域住民・商店街との関係性の再構築」
- ポイント2「学生と商店街が一体となった活動の実施」
- ポイント3「新たな可能性の模索」
活動団体情報
代表者
針生 英
連絡先
REC事務部(京都)
主な連携メンバー
淀本町商店街振興組合、商店街の各店舗の店主の方々、淀連合会自治会
主な活動地域
京都市伏見区、淀本町商店街及び淀地域